昼下がりの公園、ブランコに中学生とそのパートナーがいた。
流「…なぁ、ファイア。俺ってそんなにふ抜けてたか?」
何回目かわからない質問を相棒に投げかける。
ファイア「…わかんねぇ。」
その瞳もまた虚ろ。
流「そうだよな…」
空を仰ぐ、太陽の日差しが強く目を細める。
白きクワガタの伝説 メモリー8 強化合宿開催
珍しくコンビニにやってきた客に声をかける。
流「リオンさん…俺、腑抜けてますか?」
レジの前まで来て一言。
リオン「はぁ?」
流石に困った顔をする。
リオン「いきなりそんな事を言われても…」
ファイア「そりゃそうだな。」
メダロッチの中から。
リオン「ただ言えるのはなんだか、前と違う感じがするな。なんかこう、闘志…っていうのかな?そんな感じのものが感じられねぇんだよな。お前らから。」
流「あいつもそう言ってました。」
リオン「まぁ、精神の熟成って言うのもあるんだろうがなんだかそれとは別の問題に感じるな。…って、そうだ。合宿行くらしいけど本当か?」
流「…ええっ!知らなかった!」
ファイア「正確には覚えてなかった。だろ?」
流「お前知ってたんかい!」
ファイア「自分でいってただろ!」
メダロッチを通して口喧嘩。端から見れば独り言。
リオン「まあまあ、とりあえず行ってみてそれから考えたらどうだ?」
流「…それじゃ、そうします。それでは!」
走ってコンビニを出ていく。その後ろ姿には少しだが迷いが消えたように見えた。
ハヤト「主人公なのにやっと登場か…」
エクス「何呟いてんだよ。早くいかねえと遅れるぞ。」
彼らは合宿の集合場所、水甲平原を目指していた。自分で現地集合と言ってしまったので仕方なく電車を乗り継いでいる。
ハヤト「後はバスに乗っていくだけだな。」
エクス「旅館はちゃんとあるのか?」
ハヤト「ああ、水耕旅館って言うのがあってあやしさ爆発の値段だったからな。」
エクス「行った事あんのか?」
ハヤト「無い。」
エクス「だめだこりゃ。」
声からもその瞳からも呆れかえってるのは明らかだった。
ハヤト「ふぃー。やっとついた!」
エクス「ずいぶん涼しいなここ。避暑地にはもってこいだ。」
「おおーい。」
かなり遠くから声が。
エクス「あれ流じゃん。おおーい!」
それに答え手を振る。
ハヤト「あんな遠くに…しゃあない、パーツ転送。」
エクスカリバーのボディがミニハンドルに変わる。
エクス「メダチェンジ、行くぞ!」
エクスカリバーに乗り、出発。
ハヤト「俺が最後か?」
龍祐「そうですね。それでこれから練習ですか?」
ハヤト「いや、今日は宿で休んで明日から3日間練習をやって、夏休み開けの甲子園に望む。」
流「了解っすー。お〜い、みんな行くってさ。」
後方で遊んでるメダロット連中に呼びかける。
ウイング「いくってさ。」
ライト「やっときたか。」
遠くまで広がる高原を見、宿に入りチェックインする。
木で作られた、丸太小屋と言ったイメージの宿。外見から察するに二階建てのようだ。
ハヤト「予約で入れてある花園3中だが…」
入り口を入った先にある広い広間の隅っこの方のカウンターに話しかける。
「はい、それでは201〜204までのお部屋をお使い下さい。」
4つのキーを受け取り、それぞれに渡す。1がハヤト、2が龍祐、3がリオンS、4が流。
ハヤト「今日は解散。風呂はおっきなのが一個、メシは6時30分だからな。」
それぞれの部屋へ荷物を持って入っていく。
ハヤト「さって…疲れたな。風呂に入ってくる。」
バックのチャックをあけ、洗面用具一式を取り出す。
エクス「ん。でも誘わなくてよかったのか?美奈。」
ハヤト「こんなところに連れてこれるか。」
エクス「ふぅ〜ん、大切に思ってるのね。」
ハヤト「うるさい!」
すたすたと出ていっていってしまった。
エクス「ま、頑張りたまえ。」
ベットに寝転び、早々に睡眠をとる。
ハヤト「んっと、風呂場はあっちだったな。」
人工芝が敷かれた長々と続いてる廊下の一番向こう側にある扉に向かい歩き出す。
少し歩くとちょうど前に洗面用具を持った見なれた人影が。
リオンS「なぁ、風呂場って何処にあるんだ?」
ハヤト「あっちだ。」
進行方向の先にある扉を指差す。
リオンS「分かった、サンキュー。」
指差した方向とはまったく逆の方向へ歩いていこうとする。
ハヤト「何処行くんだよ、あっちだぞ!」
リオンS「冗談だ、冗談。」
ハヤト「ウソつけや。」
すかさずツッコミ。
リオンS「しっかしなぁ、なかなか良い宿じゃないか。いくらなんだ?」
ハヤト「…1500円。怪しさ爆発の値段なんだよ。」
リオンS「やられたかもな。」
ハヤト「ああ。」
会話をしてる間に到着。
ハヤト「張り紙が…『風呂は自分でセッティングしてください。40度あたりが良いと思います。 水耕旅館管理人』」
安さ、納得。
龍祐の部屋
こちらはメダカードを楽しんでいるようで。
流「くっそ…卑怯だぞ!ガンキングは!」
龍祐「文句言うなら自分に言ってください!」
ファイア「あきらめろ、流。あと1チップしかないんだから。」
流「だぁ〜、フライファルコン移動、ガンキングに攻撃!」
龍祐「ハニーフォースで反射しまーす。」
弱破壊。
ライト「終わったな。」
流「まだ0チップだ!」
龍祐「アークの番ですね。斜め移動、ナチュラリーに攻撃です。」
ファイア「ドンマイ。」
流「ぐあー!」
そのまま後ろに倒れこむ。
ファイア「んじゃ。」
ライト「つぎ俺らの番〜。」
あんたらも持ってたんかい!
風呂場
どうやらこちら、なんとか入れるようななったよう。
風呂に入り、会話を楽しんでるようで。
ハヤト「そういやお前、なんでゴーグルしてんの?」
リオンS「このゴーグルはじっちゃんがくれたんだ。なんでも骨董品やで見つけたらしいんだけど、すんげぇ気に入ってるんだ。それに…」
ゴーグルを外し、髪の毛に水をかける。髪の毛が下におり、そのまんまリオンと間違われそうな感じである。
ハヤト「なるほど。」
リオンS「そうだ、最近ロボトルはどうよ?」
ハヤト「順調、順調。リューっていうのにいろいろ教わってるらしくて結構あいつも上達してきたよ。」
リオンS「俺のほうも順調。フォーミュラードライブでの装甲の減りが激しいからそこが何とかしたいな。」
ハヤト「使わなければ簡単な事だ。」
リオンS「そういえばそうだな。」
ハヤト「のぼせないうちに上がるぞ。」
リオンS「ん。」
食堂
一同「いただきます。」
リオンS「…なんだ、これ。」
目の前に置かれた料理(?)を見て呟く。
ハヤト「知らん、とにかく食え。」
とはいうものの食べる気配なし。とりあえずねばっこい、白い異形のものを箸でつつくともろくも粉になり、崩れ去った。
龍祐「大丈夫かなあ?」
とりあえず、中央に置かれたパンをつかみ、食べてみる。どうやら大丈夫なようだ。
龍祐「おいし…!?」
いきなりパンが爆発、ホットになる。
流「なんなんだ…ここは?」
その後、誰と 言うわけでもなく席を立ち、自分の部屋に戻っていった。その顔は失望したといった感じだったとか。
次の日
高原の涼しい空気が通りすぎる。そこに彼らはいた。
「…ング…応…!」
「ライ……アペン…!」
それぞれの指示が飛び、熱いロボトルが繰り広げられていた。
彼らの…彼女らの…熱く、涼しい秋を予期するかのように…
龍祐「高原での練習でレベルアップした僕達!」
ライト「挑むのはメダロット甲子園地区大会、関東!」
龍祐「次回「白きクワガタの伝説」『燃えろ、地区大会!』まった来週!」