白きクワガタの伝説 Memory 3 幼馴染、そしてライバル!?
時刻は放課後。15時10分。
主人公君が机の上にぐでーと突っ伏して、ぶつぶつと何かを呟いている。
常人ではわからない言葉だ。
…任しとけ、第6電波語の翻訳は得意だ。
訳すと、「これからどうしようかな」らしい。
寒いとかいわないで欲しい。
ハヤト「さぁ〜て、部活にでもいくかなぁ〜。」
目をこすりながら机から立つ。どうやら眠ってたらしい。
ということは今のは寝言?
「ハヤトちゃん!」
ツッコミを一切無視して突然の声。
ビックリ、曲がっていた背筋がぴーんと伸びる。
ハヤト「ん!?」
ハヤトの記憶の中からある人物が鮮明によみがえってくる。
隣のクラスの石井だ。違う。
ハヤト「…ミナ!?」
振り返った先には腰まで届くだろう長い髪をポニーテールにして、尻尾を揺らしながらニコニコと笑っている。
名を針志麻 美奈(ハリシマ ミナ)。
ミナ「あったり〜。覚えててくれたんだね。」
ハヤト「忘れるわけないだろ。いつこっちに来たんだ?」
ちなみにミナとハヤトは幼馴染。小学4年生のころにミナは遠くに引っ越してしまった。
そのあとハヤトも引っ越してしまったため互いに連絡が取れずじまい。
ミナ「この間来たんだ。これからこっちに通うことになったの」
じぃ、と上目遣いにハヤトを見る。
どきりとして、慌てたのを隠そうとゆっくり視線を宙に逸らす。
ハヤト「ふぅ〜ん、そうか」
それだけ返して、机の脇にかけていたバックを掴む。
ミナ「なんか、ぜんぜん嬉しそうじゃないね」
不満そうな声で、言った。
美奈の方に視線を戻せば、ぷくぅと頬を膨らませている。
ハヤト「そんなことないさ。とっても嬉しいさ」
笑みを作ってみるが何処となくぎこちない。
その後心の中でな〜んかいやな予感がするんだよなぁ〜と呟く。
ミナ「どうしたのハヤトちゃん?」
頬を元に戻して、首を傾げてハヤトを見る。
ハヤト「いや……殺気!!」
どこから取り出したのか、吹き矢を教室の入り口に向かって吹く!
恐らく殺気の主である人影はそれをよけるとどこかへ去っていく。
ハヤト「わりい!また明日!!」
バックを背負って殺気の主を追い、教室を出て行く。
ミナ「あ、待ってよぅ!」
そのあとを追い、同じく教室から出て行く。
ハヤト「はぁ…はぁ…とうとう追い詰めたぞ…」
息も絶え絶えに着いた先はメダロット部部室。
ハヤト「出てこい犯人め!!」
思いっきり叫んで荒々しくドアをあける。
が、中にいたのはKBT型メダロット3体とKWG型メダロット1体。
人間らしきものは一つも見当たらない。どうやら某カードゲームをしていたようだ。
エクス「どうしたハヤト」
ハヤト「この中に誰か入ってこなかったか?」
ウイング「いや誰も入ってこなかったっぺそ」
ウイングの口調が変だが、いつものことなので気にしない。
エクス「俺の索敵能力で探してやろうか?」
頼む、と言われて席を立ってハヤトと連れ立って外に出る。
集中。頭の角をかすかに動かし、索敵をする。
エクス「…いた、あそこだ!」
流石に人(仮)に危害を加えるわけにはいかないので、指を指す。
人「ふ…ばれちゃあしょうがない。鍬利ハヤト!ここで引導を渡してくれる!!ミナちゃんは俺のものだ!」
なんだか知らないが流石にここで殺されるわけにもいかないのでロボトルに。
新手のストーカーだろうか?
「メダロット転送!」
出てきたのはSTG型メダロット”ライトニングイエーガー”。
全体的にエクサイズに似ているが、右腕のサーベルが3本に増えているところや、細部が違う。
「自己紹介がまだだったな。俺の名は白虎 ショウ。花園中のメダロット部エースだ!」
名乗りをあげた。自分でエースと言うのもどうかと思うが。
ハヤト「そうか。それで?」
いつも通り冷めたリアクション。
ショウ「それで?じゃない!ロボトルファイト!!」
ハヤト「え?ちょ、ちょっと……仕方ない。エクスカリバー、オウギー展開!ビームブレード出力全開!」
エクス「おう!」
エクスカリバーの右腕から銀色に輝く縦20×横10cmの四角形が出、それが左右に扇状に広がる。
左腕からはピンク色の太いビーム状のソードが展開。
ショウ「いけ、イエーガー!」
イエーガー「はい、マスター!」
それほど広くはない格闘型の得意間合い。
先に動いたイエーガーがエクスカリバーに高速で接近し、右腕のソードを縦に振り下ろす!
その剣をオウギ―で受け止め、ビームブレードを横に滑らせる。
一瞬の反発の後イエーガーの腹部に一の文字が刻まれる。
イエーガー「ぐ…でぇぇぇぇぇえい!!」
大振りによって出来た隙を見逃さず、がら空きの腹部をハンマーで殴る!
エクス「うぉぉぉ!?」
踏ん張りが利かずその衝撃で2,3回転しながら後ろに転がる。
ハヤト「エクスカリバー!」
心配そうな声をあげる。
エクス「つつつ…とりあえず大丈夫だ、次の指示をくれ」
方膝をついて立ち上がり、敵を見据える。
ハヤト「3歩バック!そのあと対射撃トラップ設置!」
エクス「了解、ご主人様(マスター)!」
地を削って砂埃を上げてバックステップ。
胸部の装甲が開き、地面に半円の物がいくつか落ちる。
ショウ「なんだか知らねぇが、とどめ!」
イエーガー「僕は格闘ですよ、射撃トラップは効きません!」
地を滑るようににして走り、右腕に装備された刃を顔の前に構える。
ハヤト「今だ、エクスカリバー!ビームブレード発射!!」
左腕を前に突き出し、ビームの刃を射出する。前回も披露した行動。
飛んだビームが射撃トラップに引っかかり、エクスカリバーに接近しようとしていたイエーガーを巻きこみ爆発を起こす。
ショウ「な…トラップって自分は引っかからないんじゃないのか?」
爆炎が広がり、すぐに収まった煙の向こうからの声。
ハヤト「さあな、どう言うわけか自分のも当たるみたいだな。」
煙が晴れてくる。その中で立つ影は一つ。
立っていたのは左腕が焼け焦げたエクスカリバーと全身黒焦げになり、背中からメダルを射出したイエーガー。
ハヤト「俺の勝ちみたいだな。さぁ、パーツをもらおうか」
イエーガーのメダルを回収してるショウに脅迫者よろしく近づく。
ショウ「だ…誰が真剣ロボトルだって言った!」
慌てた様子でメダルを握り、機体をすぐさまどこかへ転送する。
呆れ半分…いや十分で返す。
ハヤト「…さっき”引導を渡してやる!”とか言ってたじゃないか。俺は命をかけたんだぞ?」
ショウ「あれはノリだ!ノリ!」
両手を振りながら慌てて返す。
ハヤト「わかったわかった。早くパーツを渡せ」
右手を差し出す。渡せ、と言う意味。それ以外の何者でもない。
ショウ「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
叫び声をあげながら逃走、敗走、惨め。
呆然としていると息を切らしながらミナが現れる。
ミナ「はぁ…はぁ…ハヤトちゃん?いい、これからはレディファーストを思い、女の子を…」
数年前もそうだった。
彼女の説教が始まると3時間は止まらない。
ハヤト「わかったわかった。ところでさっきのあいつは何もんだ?」
方耳をふさぎながら、鬱陶しそうな顔で聞き返す。
ミナ「え、さぁ?私にもわかんないよ」
しばらく考える。が、分かるはずも無い。
その間にミナはエクスカリバーの所へ。
ミナ「エクスカリバーちゃん?パーツが変わったからわかんなかったわ。」
不思議そうな目をしてエクスが首を傾げる。
エクス「…誰?」
ハヤトに尋ねる。向こうは思案中なので相手もしてくれない。
ミナは驚きもせず話を続ける。
ミナ「誰って、私よ。針志麻ミナよ。昔から冗談が好きなんだから。」
さらに不思議そうな目をするエクス。
エクス「冗談じゃない…ほんとに知らない、マジで」
今度は流石に驚く。
ミナ「!?どういうこと?ハヤトちゃん。」
ハヤトの表情が曇る。視線を斜め下に向ける。
ハヤト「…前のエクスカリバーは……」
その先は出なかった。
言おうとしたが、友を失った日の悲しみがその先を言わせなかった。
その間が、ミナに答えを分からせた。
ミナ「…そう。いい、エクスカリバーちゃん、前のエクスカリバーちゃんより強くなるのよ!」
ハヤトを気遣ってか、わざと明るく振舞う。
エクス「おう!なんだか良くわからんが俺に任せろ!」
妙に明るい声で返す。
空には夕日が沈み月が顔を出している。
いつもとは違い赤い月が…
そして白きクワガタの伝説はここから始まる。
友との別れ、復讐、大会の裏に張り巡らされた陰謀…
エレメンタルパーツと呼ばれる4つのパーツ。
白き伝説はまだ始まったばかりである。
次回予告
リオンS「ハヤトがダークなムードだから今回は俺がやるぜ!」
ウイング「次回は初の練習試合だ!」
リオンS「さて今回の相手は…」
ウイング「次回、白きクワガタの伝説「練習試合!VS千条中!」…変なタイトル。それじゃ、また来週。」
リオンS「来週ですむかな…?」