翼のメダロット 第6話  光を受け継ぐもの


彼は目を覚ました。

窓の外で小鳥のさえずりが聞こえる、朝だ。

リオン「なんだあの夢は?時が来たらってなんだよ?」

ベットから体を起こす。額に右手をつき、しばらく考えるが心当たりがない。夢の中であったのが誰なのか。

ウイング『何言ってんだお前?』

昨晩、機体の修理が完全でなく、両方ともメダロッチの中である。

リオン「変な夢を見た。」

ベットから出て、タンスの一段目を引っ張る。

リュー『そうか。で、俺らの身体は?』

中から服を取り出し、ゆっくりと立つ。

リオン「一応修理は終わった。出るか?」

机の上においておいた二つのメダロッチをとる。

ウイング『出してくれ。動けないのは不便で極まりない。』

わかったといい、リューとウイングのメダルをメダロッチからはずし、ベットに持たれかかっている、カブトとクワガタにはめる。

ウイング「ふぁあ…やっぱり動けるほうがいいな。」

立ちあがり、毛伸びする。

リュー「まったくだ。じっとしているのはどうも慣れていないからな。」

手をグーパーし、動きを確かめる。

リオン「今日はロボトルしないからお前ら休み。好きにしていいぞ。」

うおう、と歓喜をあげて喜ぶ二体。

リオン「ただし、パーツ壊すな。」

それだけを伝え、下に下りていった。

 

ウイング「リュー、どうする?」

リュー「少し辺りをうろついてくる。ここのところロボトルばかりでろくに出かけてないからな。」

窓から飛び降り、屋根に着地。そこから更に道路に出る。

ウイング「よくこんなとこから飛び降りる気になるな。」

道路の方で何かが跳ね飛ばされる音がしたのは気のせいか。

とにかく階段を降りて、玄関から出る。

いってらっしゃいとリオンの母、有紗が告げる。

それにいってきますと返すウイング。昨日の雨は止み快晴が広がっている。

ウイング「よく晴れたな…昨日はあんなに雨が降っていたのに。」

門を出かかったとき、足に何かぶつかる。

ウイング「げ…リュー…」

ぴくぴくと手を振るえさせている。もはや虫の息。

リュー「ひ、引かれた。救急車を…」

それを残し、息絶える。

ウイング「お前の遺言は受け取った。安らかに眠れ。」

そのままどこかへ行ってしまうウイング。

 

 

リオン「ふぅ…」

自分だけの部屋。机とセットになっている椅子に座り、机の方を向く。リューがこまめに片付けてくれているおかげで、ゴミなどは散らかっていない。よく整理の行き届いた部屋。

リオン「…初めて、負けた」

昨日受け取ったカードを引出しから取り出す。

あの時は気付かなかったが、レイヤーとパレットは同じような服を着ていた。何か関係があるんじゃないかという事が、リオンの頭に浮かぶ。

リオン「…瑠璃」

なぜ瑠璃の名がここで出てきたか、その真意をリオンが知るのはもう少し先になる。

リオン「明日の、午前か。」

カードに書かれた時刻、場所。何を意味するのか分からないが今はそこにいくしかないと言う、リオンの考え。

 

 

こちらはウイングサイド

ただいま公園にいる。

ノリス「あるまー、メダチェンジ!突進だ!」

恭治「メタビー、射撃だ!」

あるまーがボールのようにメダチェンジし、メタビー目掛けて突進する。

射撃を続けるも、勢いの止まらないあるまーの突進をジャンプでかわす。

ウイング「…そこは回避じゃないだろ。」

ベンチに越しかけているウイングの中では反応弾を地面に撃ちこみ爆発させず、地雷を作るという考え。反応弾地雷の爆風により進路を変えるということ。

ロボトルはノリス&あるまーの勝利で決まりそうである。

 

 

リオン「青…」

ぼんやりと窓の外を見上げ、その色を呟く。雲がいくつか浮かんでいるが、それを差し引いても良い天気である。

「リオン、ちょっといいかな?」

リオン「なんだよ、親父。」

ぐっと背を曲げ、後ろを見る。

青い髪、眼鏡をつけた自分の父親。名を、悠璃(ゆうり)という。母親は女の子が生まれることを期待していたため、このような名前になっている。

ユウリ「大した事じゃないんだが…」

そのまま部屋に入ってきて、ベットに座りこむ。

リオン「だからなんだよ。」

くるりと椅子を回転させ、ユウリの方をみる。

ユウリ「お前の新しく手に入れたメダロット…ウイングだったか。あれ、ウイングメダルだろ?」

リオン「!?」

リオンが驚くのも無理はない。リオンはメダロットを拾ったとは言ったが、メダルの絵柄までは伝えていない。さらにはウイング自体もメダルを見せる事はしないため、事実上知る事は不可能である。…一般人なら。

ユウリ「やっぱり。…リオン、お前は戦う運命にあるようだな。」

リオン「なんだよ、それ。」

ユウリ「翼を持つものの必然…あのメダルは、この世界のものではない。別の世界のものだ。」

リオン「?」

ユウリ「別の世界…とは言っても俺達の暮らしている世界とはほとんど違いはない。ただ何処か違う。そうだな…この近くの世界では少し時の流れが違うな。大体…120年ぐらいは。」

リオン「はぁ〜そんなに違うのか。」

ユウリ「ああ、その平行世界をまとめる木…その中の…あっ!こんな時間!」

壁に掛けてあった時計を見、立ちあがるユウリ。

リオン「なんですと!親父、いいところでそれはないだろ!」

ユウリ「ごめんリオン!俺はこれから友人と合う約束してるんだ!」

時間にうるさいため、自分が遅れてはならないというのが彼、ユウリである。

話の途中だというのに急いで部屋から出ていってしまう。

リオン「なんてやつだ!」

呆れ半分、怒り立ちあがる。もう先ほどの悩みはどこかへ吹き飛んでしまったようである。

 

 

 

さらわれて連れて来られたものの、捕虜だというおかげなのかなかなかいい部屋を用意してもらっている。

「瑠璃ちゃん、ちょっといい?」

こんこんというドアをノックする音。どうぞという瑠璃。

「ちょっとお話があるんだけど。」

水色の髪の女性、確かパレットさんだっけと頭の中で考える。

瑠璃「なんでしょう?」

パレット「何で連れてきたか、説明しようと思って。」

瑠璃「はあ。」

パレット「まずわたしたちが何なのかについて説明をはじめましょう。」

壁にゆっくりと腰掛ける。

パレット「私達はロボロボ団。とはいっても上層部を潰して、市民の平和を守るために立ち上がった者たちの集まりよ。」

瑠璃「なんで上層部をつぶすんですか?」

年上への礼儀をわきまえてか、敬語で質問をする。

パレット「上の人達が悪事を働き出したのよ、冗談じゃすまないほど。上層部の悪事っていうのはまず幹部の資金横領。」

瑠璃「なんか現実的な話ですね…。」

パレット「そんでもって私達の作ったメダロットのデータを盗んでるのよね。ファントム、トルース、フェイク、バンガードビートル、ウイニングシザーズとか…最後の2体は重要なところはデータ化しないでそのまま紙に書いてるんだけど。それのデータの破壊をしなくちゃならないし。それに子供みたいな事言って世界征服なんか考えちゃってるわけ。」

瑠璃「そんな事できるんですか?」

パレット「ええ。国のコンピューターにハックしていまやオートパイロットと化した戦術兵器をコントロールしちゃうわけ。…それができるのが”あいつ”なんだけどね。」

少し、遠くを見るような目をするパレット。

瑠璃「あいつ?」

パレット「いえいえ、こっちの話し。とにかくそれを防ぐために選び出された少年が貴方の幼馴染、神龍 リオンくんってわけ。」

ふふりと一人笑みを浮かべるパレット。

瑠璃「リオン…変なやつだとは思ってたけど、まさかこんな事にまきこまれるとはねぇ…。でも、面白そう!私も協力します!」

ぐっと拳を握る瑠璃。

パレット「いいの?貴方がやりたいのなら私達は助かるんだけど。」

瑠璃「おっけーです!だって面白そうじゃないですか。それに戦場でのラブストーリー…素敵じゃないですか!」

流石は中学一年生といったところか。その瞳は夢見る少女である。

パレット「…じゃあ、私達”ロボロボ団内部破壊特殊任務活動班”へようこそ。勝本 瑠璃さん。」

瑠璃「はい!」

満面の笑みで答える、瑠璃。

 

 

リオン「やばいやばい!」

さっきから家を出たのはいいものの、誰かが後ろから追いかけてくる。

「ちょっと、ダーリン!まって!」

どうやら女の人らしいがリオンにとってはいい迷惑である。

リオン「あーもう、なんなんだよ!」

泣きながら走るリオン。何故か主人公にはこういう役が多いようである。

「まってー、私の運命の人!」

リオン「待てといわれた待つやつがいるか!電波系め!」

目の前は向こうに背の低い木が生えたフェンス。因みにそれを越えるとウイング達のいる公園の敷地内に入る。

リオン「ええい!」

目を瞑り、アスファルトを踏む。

一瞬だけ髪が蒼くなり、驚異的な跳躍力でフェンスを飛び越える。

着地と同時に、何かをふんずける感じがした。

恐る恐る下に目をやる…見覚えがある蒼いKBT型メダロット。

ウイング「…いきなり何すんだよ。」

リオン「悪い悪い、変なのに追いかけられてて。」

後ろに2歩さがりウイングの上からどくリオン。

立ちあがり、腹部についた土を払うウイング。

ウイング「変なのってなんだよ。」

リオン「いきなり家の前にでたら『私の運命の人見つけた!』とかいって追いかけてきやがった。」

見るからに嫌そうな顔をするリオン。

ウイング「浮気はよくないぜ、リオン。」

目を細めて、リオンを見る。

リオン「浮気もなにも俺はそんな気はない。むしろ助けてくれ!」

ウイングの両肩を掴み、前後にぶんぶんと振る。

かくかくとゆれるウイングの頭。

ウイング「で、それがあそこにいる人って訳ね。」

まだ揺らされていながらも、リオンの横…公園の入り口辺りを指差す。

リオン「なんだと!ああ、もう!」

ウイングの角を掴み、走り出す。

 

結局この追いかけっこは続き、最後はリオンが家の中に入り、篭城戦であった。

 

 

「久しぶりだな。」

少しくらい部屋。所々パソコン用の器具やらコードやらが散らばっている。

「ああ。お前も相変わらずのようだな。ユウリ。」

目の前のソファーに軽く腰掛ける。

ユウリ「相変わらず変な実験をやっているのか?リウ。」

リウ「変な実験とは失礼な。これでも色々と忙しいだから。」

冷蔵庫から、冷やした透明のグラスと寝かせておいたワイン、チーズを取りだす。

銀色の髪をなびかせ、ユウリの方をむく。

ユウリ「相変わらず高級なやつだな。」

リウ「いつもはもっと貧相さ。」

グラスへとワインを注いでいく。真ん中辺りまで来たところで、それを止め、蓋をする。

ユウリ「で、なんのようだ?」

リウ「レイブンが騒ぎを起こしたのは知ってるな?」

ユウリ「ああ。」

テーブルの上に置かれたグラスを手に取リ、口元に運ぶ。

リウ「それに乗じてロボロボ上層部が動き出した。」

ワインを一口のみ、口元から離す。

ユウリ「そうか。それでリオンが必要というわけか。」

ナイフを持ち出し、チーズを切る。

リウ「察しがいいな。」

チーズを口に放り込む。

ユウリ「あの性格だ。こういう事には首を突っ込みたくなるんだろう。」

リウ「そういえばあの子の髪は黒いな。どうしてだ?」

神龍家の一族が皆、髪が蒼い事をリウは知っている。

ユウリ「あいつは力を出そうとしてないだけだ。どうしてだかわかんないがな。」

リウ「そうか。…また面白くなりそうだ。」

はぁ、とため息をつくユウリ。

ユウリ「こっちはいい迷惑だ。お前に任せた。」

リウ「わかった。あの子ならバンビーとウイニングぐらい使えるだろ。」

ユウリ「また新しいのを作っているのか。そういや、テムジンはどうした?」

リウ「いるさ。お前こそリューはどうした?」

ちらと机の上を見るリウ。金色に輝く、クワガタ虫を模したメダルが置いてある。

ユウリ「リオンにやった。俺が持っててもロボトルはしないからな。」

ユウリの腕には、今はメダロッチはない。

リウ「ま、後はなるようになれってとこかい?」

薄ら笑いを浮かべる。

ユウリ「さあな。」

呆れたように言い、ワインを口に注ぐ。

 

日曜日。

リオン「さて…いくぜ!」

バックを肩からかけ、メダロッチを両腕につける。

ウイング『気合入ってんな。』

まだ出番ではないのでメダロッチの中の2体。

リオン「当ったり前だ!昨日はガンダーシリーズの超マニアック作品、陸戦型ガンダーの活躍をずっと見てたからな。」

意気揚々とバス停につく。

ウイング『はぁ?』

リュー『こいつが好きなアニメさ。ま、ユウリも好きだったがな。』

ウイング『アニメ…ねぇ。』

バスが、ちょうどバス停に着いたようである。


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