2034年、光に包まれた少年がこの地に降り立った。


Wing゜s Medarot Another would

Anothe two 〜異郷の地〜


リオン「ったく…なんなんだよ。」

あたりを見まわすが、どうにも自分が先ほどまでいたところとは大分違う。
山の中の休憩所といった感じである。日差しもまだ強い、昼下がりであろう。

結局このままだと何も判らないと言う事で、近くに見えた町に降りていく。
ウイング『これが瑠璃の言ってた”並行世界”ってやつか。』
メダロッチからの声。
ウイング『出してくれ。俺も辺りを詮索したい。』
リオン「よし…いくぜ!」
右腕のメダロッチを前に突き出し、構える。
リオン「KBT−XX バンガードビートル、ブレードウイング転送!」

何も起こらない、そう、何も起こらない。
ウイング『データが入力されていないので転送できません、だってさ。』
リオン「どういうことだよ、それ。」
ウイング『平行世界ってことは俺たちのいた世界じゃない。っつーことはこっちに転送は出来ないってことだろ。』
リオン「なんてこった…また登録とかしなきゃいけないのか。めんどいなあ。」
嫌そうな顔をして頭をぽりぽりと掻く。
『お兄ちゃん!』
背後からの声。よくは分からないが恐らく自分に当てられての声であろう。
リオン「?…なんだと思う、ウイング。」
ウイング『そうだな…新手の嫌がらせってところか?』
『お兄ちゃんってば!』
またも同じ声。まだ幼さの残っている少女の声。
リオン「どうしよう…」
ウイング『ここは間を取って逃げるとか。』
間ってなんだよ。
リオン「…はい、はい、はい。ういッス。」
いきなり独り言を始めるリオン。
ウイング『何言ってるんだよ。』
リオン「ん、ああ。いま連絡があってこの世界の人達の記憶を書き変えた。ってさ。偶然神龍って同じ苗字の人がいるわけ。他にも色々と手を回してくれたみたいだ。」
『兄上殿!』
ふうとため息をつき、振り返る。
リオン「なんでしょう妹君。」
後ろに立っていたのは金色の髪をした、ショートカットの女の子。
「早く帰ろうよ。」
よく見ればスーパーの袋を持っている。
リオン「おう。」
適当に歩き出す。
ウイング『…つくづく分からん状況になってきた。』
一路、自宅へ。

街の中心部から少し離れた閑静な住宅街。
その一角にたたずむ一軒家。
リオン「(ここが俺の家か。)
心の中でぼそりと呟く。
「ただいまー。」
妹(仮)が家の中に駆け足で入っていく。
リオン「た、ただいま。」
靴を脱ぎ、上がる。
入り口のすぐそばにある階段を上り、適当に自分の部屋と思われるところに入る。
ドアになぜかリオンと書かれた変な文字のネームプレートが張ってある。
用心深くドアを閉める。くるりと反転、壁の窓以外何も無い真っ白な部屋。
リオン「ここが…」
ウイング『俺らの部屋…』
唖然、呆然、事故の元。
リオン「まぁ慌てたって仕方ない。ここはひとつ、現状確認といこう。」
ウイング『おうさ。』
ドアに腰掛ける様に座る。
リオン「まず俺達は平行世界にきた。んでさっき言ったように俺らはここの神龍家の人達にお世話になるわけだ。そして学校にも通う。ちょうどよいことにこっちでは今は4月1日。新学期から入りましょうってわけよ。」
ウイング『それはわかった。俺のボディはどうなる。』
リオン「ん〜、と。バンビーは無いから新しく作らなくてはならん。ボディはKBT型がいいか?」
ウイング『おう。一番慣れてるからな。』
リオン「よしわかった。買い物に行って来るからお前寝てろ。」
メダロッチからメダルを外す。六枚の翼を広げた翼竜の描かれた銀色のメダル。
リオン「お前だけでもいてくれて…良かった。」
そのメダルをポケットにしまい、階段を降りていく。

リオン「母上!メダルが手に入った!パーツを買うお金をくれ!」
神龍違いですな。
母「そこの机の上にお金が置いてあるでしょ。それを持っていきなさい。」
机の上においてある紙幣を握り締め、駆け出す。
…ゴットスピード。
リオン「いってきまする!」
早急に家を飛び出し、はしる。

彼はこの町のことを知らない。もちろん、コンビニや玩具屋の位置も。
リオン「どこだ!ここは!」
道に迷ってしまったらしい。
リオン「失礼、そこの物知りそうな人。」
そばを通りかかった、青髪の、見たところリオンより2つ3つ年上の青年に話しかける。
リオン「この近くにコンビニか玩具屋知りません?」
「だったら、あーいってこーいってそーいけばつくぜ。」
リオン「あーいってこーいってそーいけばつくんですね。ありがとーッス!」
走って駆け出していく。もうすぐ、日が沈む。

リオン「お兄さんのお店…か。」
大きな店舗の店。リオンは知らないが全国チェーンの店舗。
早速中に入ってみる。
リオン「すげぇ…」
フロア一つ丸ごとメダロットコーナー。
以前彼が行った事のあるメダロッターズ本社にも引け劣らない広さ。…かも知れない。
かごを手に取りダッシュ。
男性型ティンペット、白と青のカラーのメダロッチ。近くにあったそれをかごの中に放り込む。
続いて次のコーナーで改造用の用品、整備用の用品を放り込む。
とうとう本体。射撃系コーナーに行こうと思ったが、ふと足を止める。
気になって手に取った機体、
リオンのいた世界にはなかった機体だ。
それをかごに入れ射撃系コーナーに向かう。
リオン「KBT…はここか。」
ラインナップを見てみる。
KBT−01 メダルビートル 売りきれ
KBT−02 ベイアニット 売りきれ
KBT−03 サイカチス 売りきれ
KBT−04 アークビートル 売りきれ
KBT−05 アークビートルダッシュ 売りきれ
リオン「な…これは何かの陰謀か!?」
がっくりとして一人負のオーラをばら撒いてると店員が現れ、パーツがかけてある棚に、何かをかけていった。
ちらりとそれを見る。
KBT−06 クロトジル。
おそらく、買おうとした人がお金が足りなくて返品したのであろう。
リオンの目が光った。いや、そう見えたのかもしれない。次の瞬間にはクロトジルはリオンのかごの中に入っていた。
必要なものは入れたので会計に向かう。
レジは空いていたので早く会計を終わらせ、帰宅する事ができた。

夕食を食べ終えて部屋に戻ったら、ベットなど必要な家具類が揃えてあった。なんでも、平行世界だからこそ出来る荒業らしい。
リオン「さて…作るか。」
買ってきたものを取り出す。改造用の用品、クロトジル、そしてBLB型 カビヲキラー。
製作は深夜まで続き、睡眠時間が大きく減らされた。

―次の日―
ウイング『俺のボディはまだか。』
彼らは今妹に教えて貰った近くのペイントショップに来ている。もちろん昨日徹夜で作った機体のカラーリングのためである。
リオン「まぁまて…ほら、来たぞ。」
定員から受け取る。それを見て、リオンが呟いた。白と青の位置が逆になってる…ま、いっか。と。

―公園―
右腕を前に突き出す。
リオン「いっくぜ!GPB−01 クロトジル改 ブレードウイング転送!」
メダロッチから光りが放たれる。
地面に当たると同時に、形を形成していく。
天に向かって伸びる角。
手の下に付けられた銃口。
そして、緑の光が灯る。
ウイング「ブレードウイング見参!って感じか。」
自分の身体を見る。白を基調とし、所々に蒼を入れ、脚部はバンガードビートルの色変えといった感じである。
ウイング「銃口の位置が違う…」
リオン「まぁまぁ、とりあえずあれ向かって撃ってみん。」
ごみ箱の上に立てられたカン。
リオンたちの立ってるところからは12〜13mぐらいの距離。
右腕を構える。銃口のずれを計算、ずれをなくす。
精密射撃。
銃口から放たれる、ビーダマのようなもの。速度はミサイルより速く、弾丸よりは遅い。
カンに向かって突き進む。
カコォォンという音がし、カンが空中を舞う。
下手な踊りを見せて、ゴミ箱に入った。
ウイング「…弾丸じゃないのが出てきたぞ。」
自分の銃口を覗き込む。
リオン「泡だ。チャージして撃つと大きな泡が出て、頭部の光学式反応弾を反射する仕組みになってる。」
ウイング「また変のもの作りやがって。」
リオン「うるさい。しかし、これでしばらくは大丈夫だろ。」
ウイング「何が大丈夫なんだか。」
腕の銃を下ろし、あたりを見まわす。
ウイング「ロボトルをしてみたいんだが…」
リオン「いいねぇ…」
見渡してみれば、公園の真ん中辺りを人が囲んでいる。
高い音が響き、歓声が上がる。
リオン「ロボトルやってる!」
嬉しそうに走り出すリオン。

−ロボトルリング−
「やった!俺の勝ちぃ!」
嬉しそうにガッツポーズをする少年。赤い髪をし、上に向かって宇宙アンテナ…もとい髪が伸びている。
かれこれ、これで3連勝。
まだ無傷で立っている彼の相棒のヴェイグマン。
「飛翔のやつ頑張るな。」
ギャラリーが騒ぐ。
「次の相手は誰だ!」
俄然調子付いてる。どよめくギャラリー。
「俺だ!」
ギャラリーを押し分けて出てきた少年。リオン。その後ろにウイングが続く。
「見かけない奴だな。名を名乗れ!」
リオン「ふざけるな。3回帰れ。」
反対側に立ち、メダロッチの蓋をあける。
「なんだと!」
リオン「名前を名乗るときはまず自分からが礼儀だろ。」
たしかにと頷くウイング。
「そ、そうだったな。俺の名前は飛翔 紅(ひしょう くれない)!」
胸を貼り、親指で自分を指差す。
リオン「そうか。じゃ、いくぜ!」
右腕のメダロッチを構える。
紅「いくぜ!じゃないだろ、名を名乗れ!」
リオン「貴様みたいな人様のキャラと被ってる奴に名乗る名前はない。家に帰ってラーメンの残り汁でも吸ってろ。」
ふんと鼻で笑う。
紅「この野郎…言わせておけば!エッグ!」
エッグ「はい!」
エッグと呼ばれたヴェイグマンがウイングに飛びかかる。
ウイング「やるのか…めんどいなぁ。」
さっきまで乗り気だったくせに急にやる気がなくなってる。
とはいっても流石に手を抜くわけには行かない。
左腕を構え、泡を撃ち出す。
当たるたびに破裂する泡。
空中だったため、打ち落とされ地面に落ちる。
リオン「ウイング、チャージしながらバック!一気に行くぞ!」
起き上がり様のエッグの攻撃をバク転でかわし、距離を取る。
ウイング「おうさぁ!」
バスケットボールぐらいの泡を右腕から撃ち出す。
エッグに軽く当たったあと、上空へ浮き上がる。
リオン「TONジャンプ!」
ジャンプ力で有名なTONの名を冠したジャンプ。ここではただの全力ジャンプのこと。
ウイング「おうさ!」
ぐっと膝をおり、飛ぶ。高くはないが泡に追いつくには十分な高さ。
ウイング「ガァンダーシュートォ!」
ぐるぐると回転し、オーバーへットで泡を蹴る。
それを余裕でかわすエッグ。地面に当たり、ぽよんと浮き上がる泡。
リオン「いっけぇぇぇ、光学式…反・!」
逆さの状態のまま、頭部の角から二本の、緑の光の帯を撃ち出す。
エッグに向かって光りの帯が伸びる。一本は頭部に向かい、もう一本は逸れていく。
エッグ「一本だけなら!」
大きく体を倒し、ビームをかわす。
避けられ、地面を焦すビーム。
反転し体制を整え、着地するウイング。
ウイング「甘いんだよッ!」
背を向けて、叫んだ。
エッグの後ろで、何かが割れる音がした。
紅「しまっ…」
エッグ「え?」
エッグの後頭部が焼けるように熱くなる。
目に光が消える。
…機能、停止!
リオン「こんなもんよ!」
小さくガッツポーズをする。
一瞬の間の後、歓声が上がる。
戻ってきたウイングと手を叩く。
ウイング「なかなか使いやすいかも。」
リオン「お前の好きなガンダーシリーズの技でも練習しとけ。」
因みにガンダーシリーズとはリオンたちの方でやってたアニメ。巨大ロボが悪の敵に立ち向かうというもの。フィールド系の攻撃を得意とする。
ウイング「憎い事するな。お前。」
光りとなり、メダロッチの中に戻る。
紅「そんな…」
エッグのメダルを回収し、メダロッチに入れる。
紅「名前は…名をなんと言う!」
リオン「俺の名は神龍 リオン!よーく覚えておきな!」
自信満々の笑み。
紅「神龍…リオン…」
じゃあなといって振り返り、去っていくリオン。
紅「…。」
彼が去ったあともその場所をいつまでも見つめていた。


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