「自分たちが生きている世界のほかにも平行世界っていうのがあるんだって。」
教室での会話。少女は隣に座っている少年に話し掛けた。
「へぇ〜」
少年は興味なさげに頷いた。
Another one 〜平行世界〜
やや怒った様に席を立つ、髪の長い少女、勝本 瑠璃。
「聞いてるよ〜」
それを無視する様に作業を続けるやや髪の長い少年、神龍 璃音。
瑠璃「あんたねぇ、人の話し聞くときぐらい練りケシ作るの止めなさいよ!」
因みに練りケシとは、消しゴムのかすを集め、それを定規で潰し、そのまま前後に動かして作るもの。
リオン「聞いてるよ〜」
作業を止め、迷惑そうに瑠璃のほうを見る。
リオン「で、平行世界がどうしたんだ?」
瑠璃「その平行世界に行く機械っていうのが最近開発されているらしいのよ。」
リオン「そりゃすげえな。」
また練りけしを作る作業をはじめる。
瑠璃「ああもう!…ぶん殴るわよ?」
リオン「コワイねぇ、世の中。」
拳を振り上げる瑠璃を見ず、ぼそりと呟いた。
彼の頭にその拳が命中するのと、5時間目の授業の始まりを告げるチャイムが鳴るのはほぼ同時であった。
〜放課後〜
コンクリートの道を歩く、3つの影。
リオン「ってぇ…何も殴る事はないだろ!」
帰り道、まだズキズキする頭を擦りながら呟いた。
瑠璃「人の話を聞こうとしないからよ。」
ウイング「大変だな。未来の婿さんは。」
リオン「…誰の事かな〜ウイングぅ〜」
徐に右腕の白と青のカラーリングのメダロッチに手をかける。
メダロッターがメダロットに出来る精神的攻撃、カッコワルイパーツをつける攻撃。これは精神的に辛いっていうかはずい。
ウイング「わわわ、悪かった、悪かった!それだけは勘弁!」
リオン「分かれば宜しい。…瑠璃は?」
つい先ほどまでいた瑠璃がいなくなっている。それだけ近くにいたのだから気付くはずなのに。
ウイング「また誘拐されたとか〜。」
リオン「笑えないジョークッスね。」
あたりを見まわしてみるがそれらしい人影もない。それどころか、通行人の姿もない。人通りの多い通りのはずなのに。
空間が歪んでいく。
自分が真っ直ぐ立っているのか分からなくなってくる。
朦朧とした頭の中に声が響く。
「別の世界への…観光はいかがかしら?」
馬鹿かよ。リオンは心の中で呟いた。
「拒否しようとしても無駄よ。別世界への接続は終わったから。」
次の瞬間、リオンはこの世界から姿を消していた。