翼のメダロット 第13話 最後の買い出し
―花園三中―
夏も近づき…というか夏になりあたりは暑くなっている。
ついでにこの男も暑くなっている。
リオン「ヒャッホウ!今日から夏休みだ!」
相当嬉しそうに椅子に脚をかけ叫ぶ。彼の頭には通知表をどうしようかという考えなど無いようだ。
『主よ、母上が通知表の内容を聞いているが。』
左腕のメダロッチからの声。その口調からリューだという事わかる。
リオン「全部10だって伝えといてくれ。」
因みに、リオンの学校の通知表は全5段階評価である。つまり、ウソ800。
ノリス「お前ほとんど2とかそんくらいじゃんよ。」
この暑さの中、至って冷静なツッコミ。
リオン「ええい、言ってくれるな。」
その背中に哀愁を漂わせながら静かに席についた。
省略
リオン「いざ、帰宅だ!」
教科書やらなんやらが詰め込まれた重いバックを握り締め、我先にと教室を飛び出していく。
ノリス「あちいな…」
だらだらと机に突っ伏して、もう帰ろうかと思ったころノートパソコンをいじりながら歩いてく恭治に目が行く。
興味が沸いたのでカバンを持ち、その後を追いかける。
ノリス「お〜い、何やってるんだ?」
階段にさしかかったあたりで追いつき、声をかける。
その声に気付き,歩を止める恭治。
恭治「何の用だ?」
キツイ目付きで、ノリスを見る。
ノリス「いや、それ何やってんのかなぁと。」
にひひと笑いながらパソコンを指さす。
恭治「これか?神龍に盗聴機付き発信機を取り付けて見たんだ。なかなかあいつの行動は面白そうだからな。」
ノリス「へぇ、見せてくれよ!」
ぐっと背伸びし、恭治のパソコンを覗き込もうとする。
恭治「ええい!よるな、暑苦しい!」
そりゃ夏だからねぇ。
―リオンの家―
リオン「はぁ…」
とぼとぼと2階へと続く階段を上がる。
嘘をついた&成績が悪かったということで母親に絞られたのである。
階段を上り終え、自分の部屋のドアを力無く開ける。
ウイング「ああ、帰ってきたのか。」
ベットに腰掛け、クーラーをガンガン効かせて漫画を読んでいたようである。
リオン「…まぁな。」
ばたん、とドアを閉める。そうしないと涼しい空気が逃げてしまうのだ。
ウイング「どうした?暗いな。」
読んでいた漫画を閉じ、本棚に戻す。
リオン「いやぁ、別に対した事はないんだがちょっと暗くなって見ただけ。」
にこやかに笑いながら、パソコンの前の椅子を引っ張り、座る。
にこやかに笑ってるのは夏休みへの期待からであろう。
ウイング「ふぅ〜ん。」
本棚から別の本を引っ張り出し、また読み始める。
リオンもパソコンの電源を立ち上げ、しばらくはオンラインゲームを楽しんでいるようである。
―数時間後、現在午後の3時12分―
オンラインゲームも飽きたのかディスプレイから目を離し、右腕のメダロッチを見、後ろにいるウイングの方を向く。
リオン「暇だ、買出しに行くぞ。」
リオンの唐突な発言に漫画から目を離す。
ウイング「別に良いけど…」
漫画を閉じ、本棚に戻して立ち上がる。
ウイング「リューは呼ばなくていいのか?」
ウイングが天井を見上げる。きっとその上にでもリューがいるのだろう。
リオン「もう呼んである。さ、いくぞ。」
バックを肩にかけ、クーラ―の電源と電気の電源をを消し部屋から出ていく。その後を追ってウイングも部屋から出る。
コンビニでは必要な物をすべてはそろえられないので、少し歩くがメダロッターズまで赴くことにした。因みに移動手段は徒歩である。
リオン「これとこれ売って…これもいらないな。」
メダロッチのボタンを操作し、いらないパーツを確認していく。
余談ではあるが右のメダロッチも左のメダロッチもパーツを預けている場所は同じのため、どっちのメダロッチからも同じパーツは呼び出せるのである。
ウイング「しっかし外は暑いよなぁ〜」
リオンの後ろを項垂れながらついていく。メダロットにも神経というものはあるので、暑いという事がわかるのだろう。
リュー「ずっとクーラーの効いた部屋にいるからで御座る。」
だれてるウイングの横を平然と歩いている。きっと外で瞑想をしてるので暑さになれたのだろう。
歩道の向こうにあるレンガ造りの塀をめずらしそうにリューが見ている。それに気付き、ウイングが尋ねる。
ウイング「何が面白いんだ?壁なんか見て。」
壁から視線を逸らさず、リューが返す。
リュー「ああ、この壁どこまで続いてるのかと思って。」
ウイングが視線を上げてみればまだ当分レンガ造りの壁は続いてるように見える。
売るパーツが決め終わったのか、リオンがぐっと首を曲げウイング達の方を見る。
リオン「そこは花園学園だ。金持ちが多い事で有名だからな。それとか、随分と昔の事だけど天領イッキのライバルだった辛口コウジとかもいたらしいけど…今は大したメダロッターもいないらしいし。」
額の汗を拭い、陽炎の昇る道をだらだらと雑談をしながらメダロッターズ目指して歩いていく。
―メダロッターズ―
死にかけたような顔をし、店内に入るため自動ドアの前に立つ。
自動ドアが開くと同時に涼しい風が汗を冷やしリオンに生気を与える。
リオン「…涼しい!涼しいぞぉ!」
歩を進め、店内に入る。コンビニよりも遥かに広く、棚の中にはどれもメダロット商品。
メダロットのメダロットによるメダロットだけのメダロットの大手専門店(?)、それがメダロッターズ。2階にはメダリンクと呼ばれるものも配備されていて、3階はメダロット関連のオークション会場となっている。
しかしながら夏休みに入った直後のせいか、なぜか店の中に人は少ない。
リオンが半袖の襟をつかみパタパタと仰ぎながらレジを探す。
リオン「ちょい行ってくるから、適当にうろついてろ。」
レジを見つけたのか、そのように告げポケットから財布を引っ張り出しながらどこかへ走っていく。
ウイング「どうする、リュー?」
自分の右にいるはずの相棒に話しかける。しかしウイングがそこを見たときにはリューの姿はそこになかった。
ウイング「(…いないし)」
心の中で呟き、とりあえずリオンの後を追う事にした。
端末にコードを繋ぎ、その反対側を右腕のメダロッチに繋ぐ。
縦に入った溝に、財布から取り出したメダロッター免許証を滑らし端末のボタンを押していく。
リオン「これと…これと、これと…」
メダロッチを操作していらないパーツを選択。選ばれたパーツ名が端末に表示される。
全部選び終わったので、画面の「確認ボタンを押してください」という指示に従い、確認ボタンを押す。
リオンが選択したパーツ名が長々と表示され、買い値などがその横にかかれている。
リオン「それで…ここだな。」
ピッ、と電子音が鳴る。ガ―ッと端末の内部で音がし、しばらくお待ちくださいの表示が端末に残る。
しばらく経った後チーン、というなんだか昔のレジにありそうな音がしお札が何枚かと小銭がトレイに落ちる。
ウイング「いくらになった?」
ひぃーふぅみーといいながらお札を捲っていく。
リオン「二万と四千ちょい。結構良い値になったな。」
なんでそんなにメダロットのパーツが高いんだよ!とお思いの方もいるかもしれないが,メダロットのパーツというものは結構な値段で売られているのはご存知であろう。
それにリオンはしょっちゅうロボトルをしているため、パーツをいくつも貰っているのでそれを今まで売らないでしまってあったのである。
それを今全部まとめて売ったためこんな良い値になったのである。
リオン「今回はほとんどパーツは買わん。整備用品と弾薬の補充をメインで行くからな。」
いくつも重ねられているプラスティック製の籠をショッピングカートにのせ、押していく。
整備用品や弾薬、リュー用に予備の刃、ハンマーのパーツ。僅かに売れ残っていたKBT、KWGのパーツを籠の中に積め込みレジへ。
レジのおね―さんがバーコードを読み取る機械でどんどんと買ったものを精算していく。
やがて全部の値段が表示され、ポケットに詰め込んであった先ほどのお金を差し出す。
おつりがレシートにくるまれて返される。それをまたポケットに詰め込む。
プラスチックの籠に再び入れられた商品を少し離れたテーブルまで持って行き渡された紙袋に詰めていく。
ウイング「予備のパーツなんて使うのか?」
紙袋に詰め込む作業を手伝う。重いものはそこのほうに、軽い物は上のほうにって感じで。
リオン「いんにゃ、使わない。ただあったほうがいいかな―と思って。」
すべて詰め終わり、くるくると紙袋の口を折り、最後に端の方を軽く折る。
リオン「ところで、リューはどこ行った?」
紙袋を両手で抱え上げる。色々買ったので結構な重さ。
ウイング「さっき上行ってたぞ。」
天井を見上げる。上ということを強調してるのだろう。
リオン「じゃあ見に行くか。」
2階へ進むエスカレーターの方に歩を進める。
ウイング「(…メダロッチで呼び出せばいいじゃねーか…)」
心の中で思っても、流石にツッコミはしなかった。
―2階―
リオン「おーい、リュー。帰るぞぉ。」
大型モニターに映し出されたメダリンク内での戦いを見上げている、世界にたった一つの体を持つクワガタに呼びかける。
リュー「ん、あ、ああ。分かったで御座る。」
リオンの元に戻ろうとしたとき、ふと見なれた人物に目が行き、歩が止まる。
ウイング「どうした?」
その行動に首を傾げる。
リュー「いや、アレ…」
リューの視線と指を差した先にはリオンと同じように紙袋を抱え、リューと同じように大型液晶を見上げてる、良く見なれた人物がいた。
それを見て、呆れた表情で
リオン「リウさん…」
呟いた。
―移動中―
歩いていたときにはどこまで続くのかと思っていたレンガ造りの壁が颯爽と後ろへ流れていく。
大した揺れもなく、車が道路を走っていく。
運転席にはリウが座り、ハンドルを握っている。その横の助手席にリオンが座り、肘掛に肘をつけ、頬杖をしながら窓の外を眺めている。
後部座席には二人分の荷物とウイングとリューが座っている。
花園学園の横を抜け、広い道路に出る前の交差点。赤信号が点灯しているので車を停止させる。
一瞬の静寂が車内を包み、やがてリウが口を開く。
リウ「この間貰った、進行状況によるともう大分セキュリティも大分解読されちゃってるみたい。」
なにやってるんだよと後ろで聞いていたウイングが心の中で呟く。
リウ「もって、あと6日間。下手すれば、もっと縮まる。」
赤を放っていた信号の色が、青に変わる。
リウがアクセルを踏み、車が動き出す。重力制御が進んだ今、ほとんど車内にいるリウ達は慣性の影響を受けない。
リウ「そこで、明後日…いや明々後日の午前4時。本部に攻め入ろうと思う。」
ガラスに映った自分の顔の向こうに見える街灯を見ながら、リオンが返す。
リオン「分かりました…………そのこと…」
リウ「?」
リオン「そのこと、瑠璃には伝えないでおいてもらえます?」
呟く様に、言った。
その心情を知ってか、知らずか、
リウ「…分かった。」
軽く頷いて、返事を返した。
―公園―
真ん中に立つ大木の木陰で、二人の少年が座っている。
片方は膝の上にパソコンを置き、もう片方がそれを食い入るように見つめている。
恭治「何やら面白いことになってるな…」
盗聴機から、リオン達の会話が聞こえてくる。
その声が文章化され、恭治や横にいるノリスにも分かるようになっている。
ノリス「へぇ、どっかの本部に奇襲をかけるわけだな。面白そうじゃん。」
恭治「その行き先が不安だが、まあ面白そうではあるな。」
パソコンの画面には会話の内容が次々と表示されていく。
そのうち雑談に切り替わり、大して見る価値もなくなったのでパソコンの画面を閉じる。
ノリス「明々後日の、午前4時だっけ。」
メダロッチのアラーム設定画面を開き、確認のため尋ねる。
「え?何が?」
明らかに恭治の物ではない、女性の声。
それにも気付かず、話しを進める。
ノリス「さっきの、どっかの本部に突入するって話しだよ。」
メダロッチのボタンを次々と押し、アラームの設定を終えていく。
恭治「ちょ…お前…」
恭治の声に何事かと思い、右を向き、前を向く。
そこにようやく誰かが立っていることの気が付いた。
黒い、長い髪を下ろし、勝気な目付きの女子。それを際立たせるかのような起伏のはっきりした体つき。
ノリス「勝本さん…」
その人物の名を呟いた刹那、ノリスの首に手が伸びる。
瑠璃「どういうことか説明しなさい。」
そのまま上へ持ち上げる。首が圧迫され、ノリスの顔がどんどん青ざめていく。
ノリス「ちょ…くるしいです…」
瑠璃「ど・う・い・う・こ・と・か・説・明・し・な・さ・い。」
更に首を圧迫する。
それに比例してどんどん顔が青くなっていく。
そして最後に、泡を吹いて気絶した。
瑠璃「使えない奴ね…あんた、ちゃんと説明してくれる?」
殺意の矛先を、恭治の方に向ける。
ヒィ!と叫び、四つんばいのまま逃げようとするも、瑠璃に背中を踏みつけられて押さえられ、動けなくなる。
恭治「い、命だけは勘弁を〜」
瑠璃「説明してくれたら、命だけは勘弁してあげるわ。」
恭治を押さえ付ける足に、更に力を入れる。
恭治「ヒィィ、言いますから命だけは勘弁を〜」
情けない声を出し、抵抗を止めた。
―リオンの家の前―
リオン「どうも、ありがとうございます。」
パタン、と車のドアを閉める。
数秒後、車は音もなく走り出した。
見る見るうちに小さくなっていき、やがてその姿は角を曲がって消えた。
くるりと反転し、ウイングから荷物を受けとる。
リューに玄関を開けさせ、ただいまと言いながら中に入る。
靴を脱ぎ、すぐそばにある階段を昇っていく。リューは居間へと入っていき、ウイングはリオンの後を登って行く。
自分の部屋のドアを開く。
窓を全部閉じていたので、かなり温かくなってしまっている。
机の上に置いといたクーラーのリモコンをとり、電源をいれる。
クーラーの機動音がし、やがて涼しい風を吐き出す。
買ってきた荷物をパソコンの前に置き、一息つく。ある一方を見ながら。
ウイング「いいのか?あんなこと言っちゃって。」
白いよれよれのシーツの引かれたベットの上に座る。僅かに沈み、また膨らむ。
リオン「あんなことって、なんだよ。」
パソコンの前に椅子を引き、腰掛ける。
ウイング「瑠璃には伝えるな〜って奴。」
リオン「ああ、アレね。瑠璃がいなくなればその分俺の活躍の幅も増えるからな!」
意気揚々と笑顔で答える。
ウイング「素直じゃねえな…」
何かを悟ったような声で返す。
リオン「何が言いたいんだね?ウイング君。」
訳がわからん、といった顔で尋ねる。
ウイング「べっつにぃ。」
その視線から逃げるように、本棚へ手を伸ばす。
リオン「…んなもん自分でもわかってる…」
誰に言うわけでもなく呟き、買ってきた荷物の封を開け始めた。
―公園―
瑠璃「ウソォ!?」
瑠璃が叫ぶ。その声に気圧され、1歩下がる恭治。
恭治「嘘言ったってしょうがありませんよ、お嬢様…」
まるで使用人のように、へこへことしてる恭治。
瑠璃「あのバカ…何考えてるのよ…」
いつの間に復活したノリスが、ぼそりと
ノリス「その気持ち…わからんでもないがね。」
呟く。
それを聞き逃すことなく、聞いた瑠璃が、ハッと何かを思いついたように顔を上げる。
瑠璃「…まさか…いや、でも…」
ぶつぶつと何かを呟きながら、どこかへと歩いていく。
残された二人は、ただ呆然とその破壊神の行く先を見守るしかなかった。
―夜中、某所―
白い部屋、何重もの巻き付いたコードの繋いであるパソコン。電源が灯りディスプレイには黒い画面に白い文字が映し出されている。
聖戦中(?)、と言うわけでもなく徹夜をし、ただただパソコンを食い入るように睨みながら、手元のキーボードをカタカタとうち続ける。
その主は、年のころ15、16と言ったところ。ろくな物を食べてないのか、頬にはやつれができその顔色は白い。
「ここのセキュリティには時間を食いそうだナ…フン、俺にかかればどうと言うことはないがな…」
その部屋の扉が開き、銀髪の女性が入ってくる。
ベベル「どう?どれくらい進んでる?」
手にはお盆を持ち、そのお盆の上にはビンに入った牛乳と、アンパンが乗せられている。
「後十日あれば終わる。」
パソコンの上に、お盆を置く。それに目もくれずただディスプレイを睨み、キーボードを打ちつづける。
ベベル「そう、かんばってね。」
メダロッチを見ながら、部屋を出ていく。
そして、すべてをわかりきったような声で呟いた。
「二重スパイめが…せいぜい嘘に翻弄されるがいい…」
夜は、まだ続く。
時と言うのは流れるのも早いもので、あっという間に2日目の夜が終わろうかと言うとき、少年はこの場所にいた。
―現在、午後11時34分。反乱軍本部―
リオン「…整備、終わりましたよ。」
机に向かって、両手を組んで座っているリウに言う。わかったと返し、椅子から立ちあがってどこからかホワイトボードを引っ張ってくる。
その前にリオン、パレット、レイヤーと彼らのメダロットがフェイク以外体育座りをして座る。
リウ「これから説明を始めます。質問がある場合は手を上げてね。」
それをまず言い、手に持っていたパンフレットを3人分、配る。表紙には「HOW TO ロボロボ団」と書かれている。
リウ「まずは敵の戦力の説明を。
敵の大半はサンリーンが占めています。
これは2種類あって一番の違いがメダルが入っているかいないかです。
技術の発達した現在ではメダルサイズでも大容量が詰めるようになってます。これにプログラムを入力して、機体にはめればちゃんと動いてくれるんです。それにメダロット三原則も無いから人も攻撃してくるからそこんとこヨロシク。
なんかもうメダロットじゃないって感じですけどね。
で、メダルが入っている方は大体マスター付きの場合が多いです。それか警備用ぐらいかと。
はいこっからが本番、これから攻め入る本部は全7階建てなんです。
パンフレットにも書いてあるね?例えば右端から2階に上ったら左端までいかないと三階に上れないような仕組みになっているんだ、あそこ。
中央広場の横にエレベーターがあるんだけど、今の時間は止まってます。9時から16時の間しか動いてないんだよね。
で、2階と3階は住居ブロックになっているんです。ここにパレットさんとレイヤーさんの部屋もあるので、彼女達にはそこで待機してもらいます。」
こくり、とパレットとレイヤーが頷く。
「で、リオン君はベベルさんと一緒に上まで行ってもらいます。5階から上は各幹部の管理下に置かれているからそこはロボトルで倒すか、寝ている間に通りすぎるか、強行突破するなりして。
で7階が僕達の目指す最終地点です。
そこに、今回の事件の核となる人物がいるから、そいつを倒しちゃって、ケーブルを切るなり、パソコンを壊すなりなんだりして世界征服を防ぎます!」
そこで、リオンが手を上げる。リウが指を指し、
リオン「俺はどうやって本部に入ればいいんですか?」
リオンが発言する。
良い質問だね、とリウが返す。
リウ「リオン君にはちょっと特殊なカッコをしてもらうから。それでベベルさんと一緒に歩いていれば怪しまれないから。んじゃ、よろしくぅ。」
パレットとレイヤーが顔を見合わせて頷き、立ちあがる。
二人とも不適な笑みを浮かべ、フフフと含み笑いをしている。
リオン「ちょ…何をするつもりですか!?」
リオンがうろたえ気味に言う。
レイヤー「ちょっと、ね。」
座っているリオンの両サイドに立ち、
パレット「”特殊な格好”をしてもらうだけよ。」
言った。
逃げ出そうにも、両肩を強く握られ、動けない。
ウイングとリューに助けを求めるも、二人とも無視を決め込んでいる。
リオン「お前らグルかぁ―――――――!!」
部屋中に、悲しきかな叫び声だけが響いた。
―数十分後―
パレット「うん、良い出来ね。」
レイヤー「なかなか…似合う物ね…」
特殊な格好をさせられたリオンを見て、それぞれが感想を漏らす。
リオン「なんて格好をさせるんですか!?」
リオンが半分自棄気味に叫ぶ。
今の彼の格好はレイヤーやパレットとそう変わらない物を着せられ、銀色のロングヘアーの鬘を被せられていた。
つまり、女装。
リウ「え…あ、まだ時間はあるからゆっくり休んでいて良いよ。」
メダロッチを見ながら言う。
リオン「そうさせてもらいます!」
不機嫌そうに叫び、壁の方に歩いていく。
壁に背を預けて座り、腕を組んでそのまま項垂れ、目を瞑る。
リウ「作戦開始まで、あと4時間と3分。…僕達の戦いが始まる…」
眼鏡に光が反射して、その表情は読み取れない。