もうひとつの翼  最終回  白銀の騎士


「あれは…!?」

視線の先には両腕に剣を持ち、白銀に輝く騎士。

「あ…あれにはかなわないロボ!全員撤退ロボ!」

その場にいる全員が逃げ出す。いや、龍祐だけが残った。

「龍祐、早く!」

テラカドの亡骸(違)を背負っているアキラが叫ぶ。

「みんなは先に行って!」

「でも…」

「はやく!」

「わ…わかった!新学期、学校でな!!」

「うん!」

全員が逃げたのを確認すると再びメダロッチを構える。

「勝負だ、カイザー!」

「ふ…覚えていたか。それも良かろう。いざ尋常に勝負!!」

「いっけぇぇぇぇ、ライトニング!」

「うおおおおおおお!」

ブースターを全開にして接近しチャンバラソードを横に滑らす!

「未熟!」

右腕の剣でそれを軽く受け流す。

「この!」

ビームブレードで突く!が、それも簡単に回避される。

「その程度か…」

右腕の剣で無数の突きを繰り出す!

「うおお!」

かなりのダメージを受け後ろに吹き飛ぶ!

「頭部パーツのダメージが32、右腕が56、左腕が92、足が23…ライトニング、左肩でショルダータックル!」

「おう!」

剣戟が何のそのといった感じで突っ込み、ショルダータックルを食らわせる!

「く…なかなかやるな!しかし、その程度で私を倒せると思うな!!」

今まで使っていなかった左腕の剣を構える。その剣に段々と波動が集まり始め…

「メダフォース、メテオストライク!」

剣から出た青い波動は真っ直ぐにライトニングに!

「ぐっ…!」

ぎりぎりのところで回避するが左腕に命中してしまう。恐らく機能停止しただろう。

「なるほどね…早速実践!コピーメテオストライク!!」

右腕に波動が集まり、一直線にカイザーに!

 

その様子を見ていた青いKBT、黒いKBT、白いKWG型とそのマスターらしき人物。

「ほぉ…メダフォースのコピーとは。」

「まぁ、そうやってウイングメダルは技を増やすんだからな。」

青いKBTがつぶやく。

「そうですよねぇ。」

黒いKBTが同意する。

「しかし、あの騎士、何処かで戦ったような気がするでござる。」

白いKWGが思ったことを口にする。

「ふぅ〜ん」

興味なさげにマスターが反応する。

 

「それくらいの事…できて当然!」

右に回避する。左によければ当たっていたのだから流石といった所か。

だがそれをわかっていたかのようにつぶやく。

「ビンゴ。」

ライトニングが言うと同じにカイザーの右腕に衝撃が走る。

「な…?」

「ダブルメダフォース。それが俺に与えられた”力”だ。」

当たったのは後ろから大きく曲がったライジングアロー。

まあ、平たく説明しよう。3枚のウイングメダルにはそれぞれ違う能力が与えられた。

「ライトニング、アペンディスター!」

頭部の能力、アペンディスターのチャージに入る。

「チャージ完了、ターゲットロックオン、ストッパー設置、くらえ!アペンディスター!!

1ミリの狂いもなく発射されたプラズマ弾。しかし、カイザーはよける様子はなく、受身の構えを取る。

プラズマ弾が当たるを思ったその瞬間!

剣を振り、打ち返したのだ!

「し、しまった!」

無防備の頭部に直撃して、数十メートル吹き飛び、地面にぶつかって2度、3度激しく回転する。

「ライトニング!」

「ちょ…とやばいかな?」

「くるよ!」

「え?うわぁ!」

すかさず接近し、大きく切り付けられる。右腕がだらんと下がっていることから機能停止したのだろう。

「頭部パーツダメージポイント99%、両腕パーツ機能停止、脚部ダメージポイント87%」

「もう…だめなのか?」

構えていた左腕をおろす。

「まだあきらめるわけにはいかない。俺は勝つまであきらめないぞ!」

まだ戦意が残っているライトニング。それを見て龍祐も…

「…そうだよね!あきらめるわけにはいかない!いけ、ライトニング!」

そう言い、再び左腕を構える!

「(あとライトニングにはアペンディスターを一発分打つぐらいしか活動エネルギーが残っていない…一か八かだけど、それしかない!)」

「これで…終わりだぁぁ!」

左腕の剣を縦に振り下ろす!

「真剣…白羽どり!

振り下ろされた剣を受け止める!

「ライトニング!」

「わかってる!」

上に投げ飛ばす!

「これで…」

「とどめだ…」

アペン…ディスター!』 

渾身の一撃は空中でなすすべのないカイザーへ!

「ふ…負けたか…」

自分の敗北を悟り、されるがまま、プラズマ弾を受ける。

 

ドォォォォォォォォォォォン

 

ガシャン!

地面に落ち、背中のメダルカバーが開き、乾いた音とともにメダルが射出される。

「はぁぁぁぁ…」

気の抜けた声とともにライトニングがその場に崩れる。

「ライトニング!」

ライトニングに駆け寄り、起こす。

「あああ…つかれた…わりぃが転送してくれ。」

背中のメダルカバーを開きウイングメダルをはずす。

「転送。」

穏やかな声でメダロッチに言う。メダルの外れたライトニングのボディが光に包まれ、消える。

「さて…帰るか。」

空を見上げ、出口のほうへ向かう。結局、ロボロボ団は何のために自分を襲ってきたのか?父親はどうなったのか?さまざまな謎が残ったがそんなことはどうでもよかった。自分は自分。未来に生きてる訳でもなければ過去に生きているわけでもない。現在を生きているんだ。それだけでよい。その答えが彼の中で生まれた。今日はそれだけで良い。


もうひとつの翼〜完〜