もうひとつの翼  最終回  白銀の騎士


龍祐「あれは…!?」

視線の先には両腕に剣を持ち、白銀に輝く騎士。

ロボ「あ…あれにはかなわないロボ!全員撤退ロボ!」

その場にいる全員が逃げ出す。いや、龍祐だけが残った。

アキラ「龍祐、早く!」

テラカドの亡骸(違)を背負っているアキラが叫ぶ。

龍祐「みんなは先に行って!」

アキラ「でも…」

龍祐「はやく!」

龍祐の、訴えるような真剣な目を見た。そして、アキラは決めた。

「わ…わかった!新学期、学校でな!!」

彼のいうとおりにし、それに従うことを。

「うん!」

親指を立て、軽く余裕ぶった笑みを浮かべる。

全員が逃げたのを確認すると再びメダロッチを構える。

龍祐「勝負だ、カイザー!これ以上…僕の邪魔はさせない!」

いままで、何度も戦ってきた。

カイザー「ふ…覚えていたか。それも良かろう。いざ尋常に勝負!!」

遠い、父親のメダロットだった頃の彼を、龍祐は記憶の断片で覚えていた。

しかし、今は敵。

龍祐「いっけぇぇぇぇ、ライトニング!」

「うおおおおおおお!」

ブースターを全開にして接近しチャンバラソードを横に滑らす!

「未熟!」

右腕の剣でそれを軽く受け流す。

「この!」

ビームブレードで突く!が、それも簡単に回避される。

「その程度か…」

右腕の剣で無数の突きを繰り出す!

「うおお!」

かなりのダメージを受け後ろに吹き飛ぶ!

「頭部パーツのダメージが32、右腕が56、左腕が92、足が23…ライトニング、左肩でショルダータックル!」

「おう!」

剣戟が何のそのといった感じで突っ込み、ショルダータックルを食らわせる!

「く…なかなかやるな!しかし、その程度で私を倒せると思うな!!」

今まで使っていなかった左腕の剣を構える。その剣に段々と波動が集まり始め…

「メダフォース、メテオストライク!」

剣から出た青い波動は真っ直ぐにライトニングに!

「ぐっ…!」

ぎりぎりのところで回避するが左腕に命中してしまう。恐らく機能停止しただろう。

「なるほどね…早速実践!コピーメテオストライク!!」

右腕に波動が集まり、一直線にカイザーに!

 

その様子を見ていた青いKBT、黒いKBT、白いKWG型とそのマスターらしき人物。

「ほぉ…メダフォースのコピーとは。」

「まぁ、そうやってウイングメダルは技を増やすんだからな。」

青いKBTがつぶやく。

「そうですよねぇ。」

黒いKBTが同意する。

「しかし、あの騎士、何処かで戦ったような気がするでござる。」

白いKWGが思ったことを口にする。

「ふぅ〜ん」

興味なさげにマスターが反応する。

 

「それくらいの事…できて当然!」

右に回避する。左によければ当たっていたのだから流石といった所か。

だがそれをわかっていたかのようにつぶやく。

「ビンゴ。」

ライトニングが言うと同じにカイザーの右腕に衝撃が走る。

「な…?」

「ダブルメダフォース。それが俺に与えられた”力”だ。」

当たったのは後ろから大きく曲がったライジングアロー。

まあ、平たく説明しよう。3枚のウイングメダルにはそれぞれ違う能力が与えられた。

「ライトニング、アペンディスター!」

頭部の能力、アペンディスターのチャージに入る。

「チャージ完了、ターゲットロックオン、ストッパー設置、くらえ!アペンディスター!!」

1ミリの狂いもなく発射されたプラズマ弾。しかし、カイザーはよける様子はなく、受身の構えを取る。

プラズマ弾が当たるを思ったその瞬間!

剣を振り、打ち返したのだ!

「し、しまった!」

無防備の頭部に直撃して、数十メートル吹き飛び、地面にぶつかって2度、3度激しく回転する。

「ライトニング!」

「ちょ…とやばいかな?」

「くるよ!」

「え?うわぁ!」

すかさず接近し、大きく切り付けられる。右腕がだらんと下がっていることから機能停止したのだろう。

「頭部パーツダメージポイント99%、両腕パーツ機能停止、脚部ダメージポイント87%」

「もう…だめなのか?」

構えていた左腕をおろす。

「まだあきらめるわけにはいかない。俺は勝つまであきらめないぞ!」

まだ戦意が残っているライトニング。それを見て龍祐も…

「…そうだよね!あきらめるわけにはいかない!いけ、ライトニング!」

そう言い、再び左腕を構える!

「(あとライトニングにはアペンディスターを一発分打つぐらいしか活動エネルギーが残っていない…一か八かだけど、それしかない!)」

「これで…終わりだぁぁ!」

左腕の剣を縦に振り下ろす!

「真剣…白羽どり!」

振り下ろされた剣を受け止める!

「ライトニング!」

「わかってる!」

上に投げ飛ばす!

「これで…」

「とどめだ…」

『アペン…ディスター!』 

渾身の一撃は空中でなすすべのないカイザーへ!

「ふ…負けたか…」

自分の敗北を悟り、されるがまま、プラズマ弾を受ける。

 

ドォォォォォォォォォォォン

 

ガシャン!

地面に落ち、背中のメダルカバーが開き、乾いた音とともにメダルが射出される。

「はぁぁぁぁ…」

気の抜けた声とともにライトニングがその場に崩れる。

「ライトニング!」

ライトニングに駆け寄り、起こす。

「あああ…つかれた…わりぃが転送してくれ。」

背中のメダルカバーを開きウイングメダルをはずす。

「転送。」

穏やかな声でメダロッチに言う。メダルの外れたライトニングのボディが光に包まれ、消える。

「さて…帰るか。」

空を見上げ、出口のほうへ向かう。

結局、ロボロボ団は何のために自分を襲ってきたのか?父親はどうなったのか?さまざまな謎が残ったがそんなことはどうでもよかった。

自分は自分。未来に生きてる訳でもなければ過去に生きているわけでもない。現在を生きているんだ。それだけでよい。その答えが彼の中で生まれた。今日はそれだけで良い。


もうひとつの翼〜完〜