「ふあぁ〜あ、今日も平和だな〜。」
コンビニの中で一人の青年がつぶやく。
「てめぇ、何でコンビニのバイトなんだよ。」
彼の愛機のKBT型が文句を言う。
「うるせぇ、伝説のメダロッターはコンビニでバイト。これで決まりなんだよ。」
青年はすかさず反論する。しかし、青年の働くポップマートは暇であった。
もう一つの翼 第1話 3円のメダロット
「龍佑、はやくメダロットかいなよ。」
一人の少年が腰のあたりまで髪が伸びていて、顔は穏やかな感じの少年に言う。
「うん、でも僕これしか持ってないんだ。」
龍佑と呼ばれた少年はポケットから4枚の個体を出し、友人に見せる。
「げ…3円…それといつものメダル…これじゃ買えないよな…」
龍祐「うん…」
この二人の周りだけ暗い雰囲気が漂っている。
放課後
帰り道、人通りの少ない、裏通り。静かな事から、龍祐はこの道を好んで使い、帰宅する。
そこを通っていると急に後ろから声をかけられた。
「おい、てめぇ!メダロットだしな!!」
後ろを振り返る、すると、学ランにリーゼント、いかにも不良といった感じの男が立っていた。って言うか今の時代にそれは無いだろう。
「俺は泣く子も黙る、最強のメダロッター神龍リオンだ!」
親指で自分を指差す。
龍祐「あ…あの…僕、メダロット持ってないんです…」
ちょっとビびりながら言う。元々気が弱いのだろう。
「なんだと!てめぇ!!今すぐ買って来い!!」
それを聞き一目散に駆け出していく。
−コンビニ−
「よし!これで完成!!」
「完成!!」
この一人と一体の作っていたものは同時に完成を向かえた。
「何が出来たんだ?」
「見て驚け…”メダチェンジ、メダフォース、サイカチスVerリオン、ブルーメッキバージョンだ!”」
青いKBTメダロットが、作っていたものを見せる。
「あれ?それってオレンジのメッキじゃなかったっけ?」
「それを塗り替えて、作ったんだよ。」
どうやらプラモデルの類が好きらしい。
「じゃあ、今度は俺が!ブラックビートル、俺スペシャルだ!ティンペットも、ほとんどお前並に強化してあって、武装もパワーアップ!!」
青く塗られた、眼帯を着け、両腕が僅かに大きくなっているブラックビートル。
「おお!すげー!でも戦車モードなんてよく出来たなァ。」
メダロットの改造というものは簡単にはできない。
装甲が特殊であるため、素人が下手に手を出せば、壊しかねない。そのため改造メダロットは世に少ないのである。
「ああ、あれ。めんどくさいからサイカチスと同じようにしたんだよ。」
バン!荒々しくドアを開け一人の少年が入ってくる。
「あ、いらっしゃいませ。」
「メダロット売ってください!あ、これでいいです。ハイ、お金。それでは!」
レジの上に置かれていたブラックビートルとメダロッチを持ち、3円を置いてまた出ていってしまった。その間わずか0、3秒。
「…3円…」
彼の苦労は3円と値段づけられた。後ろで彼のメダロットが笑いをこらえて必死にもがいている。
再び裏通り
「お、買ってきたな。パーツは四つ掛けだ!!」
俗に言う初心者狩りという奴か。
「その勝負合意と見てよろしいですね?」
レフェリーも何時の間にか待機している。
龍祐「ちょっとまって!」
すかさず止めに入る。彼のメダロットはまだ起動してはいないからだ。
手に持っていたメダロットを自分の前に置くとメダロットにポケットから取り出した翼の模様の入った銀色のメダルを一度見る。
「頼むよ…」
祈るように目を閉じ、父の残したメダルを、KBTの背中のハッチの中の六角形のくぼみにはめ込む。
背中のハッチが閉じる。
ウィィィィ。
機動音を立て、静かに起動するメダロット。
黄色の瞳が、灯る。
「…ここはどこだ?お前は俺のマスターか?」
目の前にいる人物に話しかける
龍祐「うん、僕が君のマス…いや、友達の龍佑だ。君の名前はライトニングだ。」
主従関係は望まない、あくまで立場を考え、言い換える。
ライトニング「よし、分かった。よろしく頼むぜ。」
龍祐の手を借り、立ちあがる。
龍祐「うん。」
嬉しそうに、笑う。
不良「ごちゃごちゃ言ってねえではやくかかって来い!俺のリューとウイングでひねりつぶしてやるぜ!!」
なかばキレ気味。
先ほどのメダロッチを腕につけ構える。
レフェリー「ロボトルファイト!」
開戦と共に左右に散る白と青。
メダロッチで、ライトニングに指示を送る。
龍祐「ようし、ライトニング、右腕で攻撃だ!」
それを聞き、右腕を構える。
ライト「よっしゃ、いくぜ!」
右腕の銃口から細い光、通称”レーザー”が放たれる。
「頭部パーツダメージ121%、ティンペット貫通、システム停止。」
不良「なんてことするんだ!!高かったんだぞ!これ!」
いきなり一転、半泣き状態になる。
龍祐「よし!こんどは白い方だ!!」
俄然活気づく。
不良「よけろ、リュー、後ろに回りこむんだ!!」
ぎりぎりでレーザーをよけ後ろに回りこむ。
「左腕で打ち落とせ!」
構えた左腕に、粒子が集まる。こちらへ飛びかかる白。空中ならかわせない。充電が完了し、先ほどのよりも高出力のレーザーが放たれる。
飛び掛ろうとしたリュー(仮)の頭部にレーザーが貫通し機能停止する。
ガシャン、と地面に落ちた。ライトニングの銃口が煙を上げている。
レフェリー「リュー、機能停止!勝者龍佑チーム!!」
龍祐「やったー。すごいぞ、ライトニング。」
親指をぐっと立てる。
ライト「余裕。」
自身満々の笑みを浮かべ、腰に手を当て仁王立つ。
−龍祐の家−
家の前に着く龍祐とライトニング。
龍祐は家に入るのがかなり辛そうだ。
意を決して、中に入る。
「龍佑、あんたメダロット買っちゃったの?」
おばさんの第一声がこれ。
「出て行け!!」
二言目にはこれ。家に入りたくない気持ちがよく分かる。
「…わかったよ、おばさん。出て行くよ。」
部屋に入り、トランクケースに荷物をまとめる。
「???」
彼は親類の家を転々としていて厄介物扱いだったのだ。
ライト「あれ?こんな簡単に家を出ちゃっていいの?」
龍祐「いいよ。あのひと嫌いだったから。」
トランクケ−スを引くごろごろという音が、暗い夜道に響く。
ライト「ふーん。」
龍祐「…それに僕の父さんと母さんは、行方不明になっちゃったんだ。」
一応事情を説明しといた方がいい、といったところか。
ライト「んー。で、これからどうすんの?」
空を仰ぎ、考える。
龍祐「とりあえずコンビニ行こうか。」
親友にいつもの笑みを投げかけ、コンビニへと向かう。
−コンビニ−
「あ〜あ、取られちゃったぁ〜。」
かなり落ちこんでいる。それでも24歳か?
「どんまい。」
そばにいる青いKBTが慰める。
ガー。
いつの間に自動ドアになっている。
「あ!昼間の少年!!」
龍祐「あ!昼間の店員さん!!」
「俺のブラック(ブルー)ビートルは?」
龍祐「あれです。」
店をきょろきょろ見回してるライトニングを指す。
ライト「何のようだ?」
「使ってるのかー。ガク。」
首を下に向けさらに落ちこむ。
「まあ、いいじゃん。」
陽気に背中をたたく。
「よくない!」
怒って振り払う。
「あのー、店員さんのメダロット変わってますね。普通KBTって黄色とかオレンジじゃないんですか。」
彼のカラーリングは蒼。KBTとしての分類としては珍しいだろう。
「ああ、始めてあったときからそうだった。」
龍祐「へぇー。そうなんですか。」
「ところで君、帰らなくていいの?もう十二時だよ」
龍祐「……僕、家を追い出されちゃったんです…」
龍祐の顔がかなり暗くなる。
「そ、そうなの…」
店員はしばらく考えると、
「よし!わかった。君は今日から俺の家族だ!!」
龍祐「はぁ…?」
店員はポケットから紙を取り出すとそれに何かを書き渡してきた。
「はい、これ住所。それと鍵、203号室だから。」
龍祐「え…いいんですかぁ!!」
いっきにぱあっと明るくなる。
「うん。一人増えたぐらいどって事ないさ。」
龍祐「やったー!」
翼が風を起こす。
新たな時代の若い風を。
物語は、始まったばかりである。
「俺の家族なんだからお前の苗字は神龍だ。」
明かされる店員の名。
「三十六体目!」
友の強さは普通じゃない!
「これが本物の射撃だ!」
蒼の離れ業炸裂!
「あれでよくリオンの名が名乗れたな。」
KBT−X3 ブラックビートルカスタム ライトニング
メダル:ウイング
特製強化型ティンペット
頭部:シャドウバリスター
右腕:ライトブラスター
左腕:レフトブラスター
脚部:シャドウエンブレンス