時は2156年。
今は昔の物語となってしまった英雄達が救ったこの星、地球。
人口増加、環境問題、そして戦争…
様々な事が起こり、鎮圧されていった。
しかし人口増加だけはどうする事も出来ず、人々は無限の地…宇宙を生活圏にしようと考えた。
その目論みは成功し、宇宙空間にはコロニーと呼ばれる筒状の大型生活スペースが作られた。
人々は競って宇宙へ飛び出し、そのコロニーへと移っていった。
この物語は、そんな地球で起きた、翼のメダロットの話である。
翼のメダロット 第〇話 全ての始まり…
メダロットと呼ばれる1mサイズの人型お友達ロボット、メダル+ペット+ロボットの3つの合わせた名前でメダロットと呼ばれる。
ティンペットと呼ばれる骨格に、頭、右腕、左腕、脚部の4つのパーツ呼ばれる物を装着し、「メダル」と呼ばれる人間の脳と同じ役割を持つものを装着すると完成する。
値段も手頃で、それは瞬く間に一般に浸透していった。
しかし、人の作るもの。やがて、飽きられ捨てられる事もないわけではなく、捨てられた者は「野良メダロット」として自らテリトリーを作り生活している。
そんなメダロットと人間が表面上は共存している。しかし、そんな時代はいつかは崩れる。
いや、崩そうとしている者達がいる。ロボロボ団。メダロットを悪用し、いたずらをしている連中である。
下っ端はたいしたことはないが、上層部では恐ろしいことを考えていた。
「これが新しいメダロットか………。」
首領と思われる男の前に立つ、黒いメダロット。背中に堕天使の翼を宿している。
「いや、メダロットではありません。生きる兵器です。」
それを作ったと思われる人物が、黒いメダロットの背後に立つ。
「おもしろい、その方がわたしにふさわしいではないか。ふふ…」
さぞ面白そうに含み笑いをしていた。
ここはどこかの研究所。白衣に身を包んだ三人の研究者がスクリーンに映った三枚のメダルを眺めていた。
「ついにアレが完成したか…このメダルを使うときが来て欲しくなかった…。」
白髪の、ネームプレートに「月島」と書かれた白髪混じりの男が項垂れる。
「仕方ありません。アレが完成した今、アレを倒せるのはこの”ウイングメダル”しかないのです。」
銀色の眼鏡をかけた男が言葉を返す。
「.しかし、このメダ…」
青い髪の男の声を遮るかのような事態がこのあと起こった。
―――――ドオォォォォォォォォォォォン!
爆音が広がる。砂塵と爆炎の向こうに、何人かの影が見える。
それらが消えたあと、数人の男達が視界に入ってきた。
黒い全身タイツに身を包み、頭の上には金色の2本角を生やしサングラスをかけた人物達。
「首領の命において、そのメダル、奪いに来たロボ!!」
見るからに変な服装の男達。
「くっ!博士、せめて1枚だけでも!!」
青い髪の研究者が叫ぶ。
反射的に博士と呼ばれた男がぴくりと動く。
「わかった、後は頼む!!」
博士といわれた男は三枚のうち、1枚を握り、研究室から出ていった。
「博士は逃げたか?」
銀色の髪の男が、左腕の時計に手をかける。
「ああ、思いっきり暴れるぜ!!」
青い髪の男が白衣のポケットから緑色の龍の描かれたメダルを取り出す。
よほど腕に自信があるらしい。
青い髪の男が、緑色のメダルを時計の六角形のくぼみにはめ込む。
そして、その腕を前に突き出す。
銀色の髪の男と顔を見合わせ、同時に叫ぶ。
『メダロット、転・送!』
二人の目の前に時計から光りが伸び、徐々に人型を作り出していく。
同じように先ほどの変な服装の男達の前にも、光りが伸びていく。
「すいません、首領。1枚しか奪えませんでした。」
奪ったたった一枚の銀色のメダルを差し出す。
「そいつをレイブンの練習相手にしてやれ。」
右手で軽くあしらう。
「はっ!」
遊び相手と言っても普通のものではない。戦う相手ということだ。
「いけ。」
他の一般兵とは違う格好をした男が促す。
実験場のようなところで、2体の黒と青のメダロットが間隔を開けて立っている。双方の背中には何本もの色とりどりのコードが繋がれている。
「いくぞ…ウイングメダル…」
呼ばれた蒼い色のサイカチス。イマイチ状況が読めないといった感じであたりを見まわす。
「しいていうなら、ウイングって呼んでくれ。」
蒼いサイカチスの発砲。
黒の足元に数発撃ち込むと反転。背中のコードを自分で引き千切る。千切れたコードがスパークを起こしている。
「お前ら!俺を実験台にするな!」
両腕の銃から適当の弾丸をばら撒き、いかにも扉といった所まで走る。
それを何人もの薄い緑色の全身タイツに身を包み、金魚蜂をかぶった一般兵が追おうとするが、足元に銃弾が突き刺さり、歩を止める。
黒…レイブンの射撃。歩を止めた隙に青が勢いをつけて壁にタックルをかまし、その向こうに駆け抜けていく。
「歴史を変えてくれ…時の介入者よ…」
反転、自分の主だという男をターゲットサイトにいれる。
「な…なにをする気だレイブン!」
白衣を着た男が叫ぶ。機械を滅茶苦茶に操作し始める。
レイブン「…っ…おおおおおお!」
レイブンの各所がスパークを始める。
苦しそうにライフルを乱射する。
銃弾に射貫かれ、血飛沫を上げる人間達。
「…頼むぞ…あとは…」
レイブンもまた、自らが撃った男達と同じように倒れ込んだ。
続く